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Korea Foundation One-Day Forum Vol.2 朝鮮人とアイヌ民族――文化アイデンティティと歴史的つながり 【報告】
講演
- 第1講
- 「アイヌとして生きること」
- 講師:アシリレラ(山道アイヌ職業学校校長・環境活動家)
- 第2講
- 「朝鮮人とアイヌ民族の歴史的繋がり」
- 講師:石純姫(苫小牧駒澤大学客員教授・東アジア歴史文化研究所所長)
講演要旨
第1講
人間は川を壊してダムをつくる。金のためにつくるのだが、そうしてできたダムは魚の生態系を破壊する。また、熊が出たといってそれを撃ち殺すが、それは山に食べ物がないからである。動植物が悪いというが、地球を壊しているのは動植物たちではない。動植物たちこそが自然のサイクルを作っているのであり、それを壊しているのが人間である。人間には必要以上に搾取することは禁じられている。日本人はアイヌも朝鮮人の血も両方引いている複合民族なのであるが、これまでアイヌの人々は差別され、何人もの人が自殺さえするほどであった。環境問題は命の問題でもある。われわれにも節電・節水ならできるし、無公害の石鹸や無添加のものを選ぶことはできる。他の人たちを病気にしないためにも、地球環境をしっかり考える必要がある。アイヌの昔の言い伝えには、こうした命の問題を扱ったものがある。私たちの宝は目の前にある。それを大事にしてほしい。
第2講
戦時下の北海道において、過酷な強制労働の現場から脱出した朝鮮人たちを、アイヌの人々は匿い、助け、共に生きてきた。それは近代アイヌの、抵抗の1つの形態であり、多様なアイヌ像をあきらかにするものである。近代史そのものがはらむ、非人間的な収奪と抑圧、ならびに人間の分断の歴史があったことを記憶しなければならない。北海道における朝鮮人やアイヌの歴史的なつながりは、天皇制のもと、国民の物語から排除されてきた人びとの、非常に貴重な埋もれた遺産である。表層的には均質で単一な文化・社会を形成をしていると思われている日本にも、多様なルーツを持つ外国人や、様々なマイノリティが存在している。そうしたマイノリティーの形成過程を明らかにすることは、近代アイヌ史の見直しへと通じるとともに、在日コリアンの形成過程ならびに日本社会・日本文化の多様性という視野にも、新たな展開をもたらすものである。
文責:大学院言語社会研究科/境一星(博士課程)