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第10回四十雀賞授賞式・受賞記念講演会
四十雀賞とは
当研究室では、毎年、本邦の音楽文化に広く貢献した個人・団体に「四十雀賞」をお贈りしています。賞の名前は、一橋大学があります国立市の鳥で、美しい鳴き声を持つ「シジュウカラ」に由来します。
2022年 受賞者 音遊びの会
「音遊びの会」は知的障害者とその保護者、音楽家、音楽療法士、ダンサー約70名で組織される神戸のグループである。2005年に結成され、月2回のワークショップを主とし、加えて地元小ホールにおける自主公演、及び依頼による遠征公演を15年以上にわたり行ってきた。2021年には、初のスタジオ・レコーディング・アルバム「OTO」を発売する等、活動の幅を拡げている。
活動拠点の神戸で行われるワークショップ、飯山ゆい代表の言葉を借りれば「何かを作るという目的のない自由な音楽セッション」において、障害の有無に関係なく、マジョリティの発想を超えた自由な音楽表現の機会が提供される。そこでは2017年から、同会メンバーではない一般の参加も可能になった。
「音遊びの会」という団体名は同会のウェブサイトにある通り、キャロリン・B・ケニーの「遊びの場」の考え方に基づく。その考え方は人間の苦しみに「何かをすること」で対応するのではなく、苦しむ相手の存在を感じてその空間に「共にあること」「それぞれの美の中を歩むこと」を中心に置いている。実際、「音遊びの会」では障害者と「共にある」「遊びの場」をみごとに実現した。
「音遊びの会」は、世界人権宣言の「すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。」という第27条の実践であると言える。つまり、「音遊びの会」には障害者と共に自由につくる音楽の豊饒さに気づかせ、社会意識を変革する力がある。
以上の理由から、「音遊びの会」に第10回四十雀賞を授与したい。
四十雀賞 これまでの受賞者の方々(敬称を略します)
- 第1回(2013)
- 岡田 暁生(著作『恋愛哲学者モーツァルト』に対して)
- 第2回(2014)
- 宗次ホール/宗次 德二(小規模コンサートホールの開設・運営に対して)
- 第3回(2015)
- 村上 輝久(長年にわたる調律師としての活動に対して)
- 第4回(2016)
- 大友 良英(著作『学校で教えてくれない音楽』をめぐる活動に対して)
- 第5回(2017)
- 「ヒロシマと音楽」委員会・能登原由美(ヒロシマに関わる音楽のアーカイブ化とその普及活動に対して)
- 第6回(2018)
- 高橋管楽器(サクソフォーンを中心とする「楽器修理」に対して)
- 第7回(2019)
- 大澤 徹訓(漫画『のだめカンタービレ』における音楽監修に対して)
- 第8回(2020)
- 映画『LISTEN』(聾者による「音楽」の表現に対して)
- 第9回(2021)
- デリバリー古楽/柴田 俊幸(コロナ禍において古楽器による生演奏を届ける活動に対して)