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教員紹介

教員と研究領域/第1部門(人文総合)

八幡 さくら

研究室:東キャンパス国際研究館6階
オフィスアワー:随時(ただしメールによるアポイントメントを要す)
連絡先:メールアドレスはスパム対策のため画像化されています
研究概要

ドイツ観念論の哲学者F・W・J・シェリングを中心に、ドイツ観念論や初期ロマン主義について研究しています。主軸としているのは、1)構想力概念の影響作用史、2)シェリングの芸術体験と同時代性の2点です。1)として、シェリングがカント批判哲学をいかに受容し、同時代の哲学や美学との関わりの中で思想を展開させていったのかを研究しています。2)として、シェリング自身の芸術鑑賞体験や作品分析を検証しています。18~19世紀のドイツの美術館の成立史からシェリングの芸術体験を再構成することによって、芸術体験やその知識が哲学の理論構築にいかに寄与したのかを調査しています。また、シェリングのバイエルン王立造形芸術アカデミーでの芸術実践活動に着目し、シェリングと同時代の芸術との関係を探求しています。

ロマン主義の風景画に見られる自然と人間の関係について研究する中で、「風景とは何か」ということに興味を持ち、3)風景と自然の概念に着目した現代芸術や環境美学についての調査を進めています。近年日本で数多く開催されている芸術祭や庭園・公園という公共空間に着目し、自然と芸術をいかに融合させて、わたしたちが風景をつくっていくかを検討しています。

研究・教育方法として、アクション・リサーチと哲学対話を取り入れています。アクションリサーチは、実際に現場に足を運んで問題を発見し、調査を進めるという研究方法の一つで、主体的な学びの場です。世代や立場、地域などの様々な違いを越えてニュートラルな関係の中で進められる哲学対話は、論理的な思考力を鍛えるだけでなく、互いの価値観を認め合う人間関係を形成していく場づくりにもなっています。

メッセージ

ドイツ観念論やロマン主義など、古典的な学問である近代哲学・美学が、日々目まぐるしく変化し続ける現代のわたしたちの生活に一体どんな影響があるのか、と疑問に思う方もいるでしょう。例えば、「美しさとは何か」と問うことは、自分の価値観を見つめ、他者との距離を測ることでもあります。あなたが使っている概念がそもそも何に由来するのか?あなたの価値の指標はどこにあるのか?多くの哲学者たちが長くそのことを問うてきました。その歩みの上に、わたしたちの思索もあるのです。つまり、近代哲学・美学を学ぶことは、自らの語彙を見直し、自分の思考を深め、多様な価値観のあり方を認めることでもあります。古典を読んで自らの思考力を鍛えることは、いまわたしたちが抱える現代社会の問題を客観的に見つめ、その課題や解決を探る一助となるでしょう。もちろん、哲学者たちが己の思考を洗練させて真剣にしたためた、堅固で難解なテクストを読み解くことは容易ではありません。しかし、それに真摯に向き合い続けることで微かに見えてくることもあります。あなたの「なぜ?」を近代哲学・美学に向き合う中で探してみましょう。

2024年2月